本研究の目的は、牛肉中の不飽和脂肪酸含有量に影響する遺伝子変異を同定し、育種選抜に利用可能なDNAマーカーを開発することである。本年度は、脂肪酸代謝においての関連が報告されている6つの遺伝子、adipocytes fatty acid binding protein (FABP4)、liver X receptor α (LXRα)、cytochrome b5(Cyt b5)、long-chain acyl-CoA synthetase(ACSL)1、ACSL4、diacylglycerol acyltransferase(DGAT)2、に着目し、翻訳領域の塩基配列決定と多型探索を行った。多型探索によって同定された多型に対して、これらの遺伝子型と脂肪酸組成および枝肉形質との関連について相関分析を行った。 6つの遺伝子において、黒毛和種5個体とホルスタイン種3個体の8個体による多型探索の結果、14のSNPsを検出した。このうち、FABP4とLXRαにおいてアミノ酸置換を伴う多型が2つずつ同定された(FABP4 I74V及びV110M、LXRα G51E及びV133I)。これら4つの多型について脂肪酸組成および枝肉形質との関連について分析したところ、FABP4 I74VはC16 : 1の割合において高い有意差が観察され(P=0.0086)、I/Iホモ接合体がV/Vホモ接合体よりも0.51%高い値を示した。LXRα V133IはC18 : 2の割合において有意な差が観察され(P=0.0121)、V/Iヘテロ接合体がV/Vホモ接合体よりもC18 : 2の割合において0.22%有意に高い効果を示した。 本研究において同定された遺伝子多型、特にFABP4 I74Vの効果は相加的であり高い有意差が検出されたことから、種雄牛選抜における有効なDNAマーカーとなることが示唆された。
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