本研究の目的は、牛肉中の不飽和脂肪酸含有量に影響する遺伝子変異を同定し、育種選抜に利用可能なDNAマーカーを開発することである。我々はこれまで黒毛和種において牛肉中の脂肪酸組成に影響する遺伝子変異について報告してきた。本年度は、1.それらの遺伝子マーカーのホルスタイン種における効果、2.新規遺伝子マーカーの探索、について検討した。 1. ホルスタイン種去勢肥育牛198頭を実験に供し、筋組織よりゲノムDNAを抽出し、PCR-RFLP法により各遺伝子の遺伝子型判定を行った。対象遺伝子マーカーは、SCD、SREBP、FABP4、LXRα、とし、対象形質は枝肉6形質及び横隔膜筋の脂肪酸組成割合とした。結果、SREBPにおいては多型が観察されず、LXRαは遺伝子型頻度に極端な偏りが見られた。いずれの遺伝子も、枝肉形質に効果は見られなかった。FABP4遺伝子型においてはC16:0との関連が見られた。また、SCD遺伝子型においてはC14:0、C14:1、C18:0、SFAとの関連が見られたが、黒毛和種において報告のあるC18:1に対する有意な効果は本研究では見られなかった。しかしながら、これはVV型の個体数が少なかった(n=18)ためであると考えられ、最小二乗平均値では黒毛和種と同様にAアリルに相加的な効果を示す傾向が見られた。 2. 脂肪酸代謝においての関連が報告されているAcetyl-CoA carboxylase-α(ACACA)遺伝子に着目し、黒毛和種4個体とホルスタイン種4個体の8個体を用いて、翻訳領域全長7041bpにおける塩基配列決定及び多型探索を行った。多型探索によって同定された5個のSNPsに対して、これらの遺伝子型と脂肪酸組成および枝肉形質との関連について相関分析を行ったが、いずれの形質においても有意な効果は観察されなかった。
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