低栄養による性腺機能抑制が大きな問題となっている。本研究の最終目標は長鎖脂肪酸をシグナル分子とした性腺機能制御メカニズムが下垂体の性腺刺激ホルモン産生細胞(ゴナドトロフ)に存在することを証明することにある。本年度は、黄体形成ホルモン(LH)mRNA発現量における長鎖脂肪酸の役割についてin vivoとin vivtoの両面より実験を行った。 ゴナドトロフ株化細胞LβT2と成熟マウス下垂体の初代培養細胞をパルミチン酸に暴露した後、mRNAを抽出し、リアルタイムPCR法でLHの転写活性を調べた。その結果、24時間の暴露によりLH mRNA発現量の減少が観察された。また、同実験時に培養液中の乳酸脱水素酵素(LDH)濃度を調べた結果、パルミチン酸暴露群とコントロール群の間でLDH濃度に差は見出せなかった。このことから、パルミチン酸は細胞死を介さずLH mRNA発現量の抑制を誘起することが明らかとなった。次に、成熟雄マウスを用いて2日間の高脂肪食負荷実験を行った結果、高脂肪食負荷により下垂体においてLH mRNA発現量の減少が観察された。しかし、30日間の長期負荷実験では発現量の減少は観察できなかった。これらのことから、長鎖脂肪酸は短期的には下垂体レベルでLHのmRNA合成を抑制することが示唆された。現在、^<125>Iを用いたLHの測定系を作成中である。今後は性腺刺激ホルモン放出ホルモン刺激によるLH分泌を長鎖脂肪酸が抑制するか調べる予定である。
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