本申請課題の目標は、哺乳類の減数分裂におけるコンデンシンと呼ばれるタンパク質複合体の役割を明らかにすることである。哺乳類の体細胞ではコンデンシンIとIIの2つのタイプが存在することが知られているが、卵母細胞におけるそれらの発現は調べられていない。そこで、まずマウスのコンデンシンサブユニットに対する抗体を作製して蛍光免疫染色法により、減数分裂過程におけるコンデンシンIとIIの動態を調べた。それぞれのコンデンシンに特異的な抗体を用いた免疫蛍光染色によると、卵核胞(GV)期では、コンデンシンI(mCAP-G)は細胞質に、コンデンシンII(mCAP-D3)は核内に存在することがわかった。GV崩壊後、第一分裂の前中期(Prometa-I)から中期(Meta-I)にかけて、コンデンシンIはキネトコア近辺に局在し、腕部にはほとんど検出されなかった。一方、コンデンシンIIは、Prometa-Iでは染色体全体に微弱なシグナルとして、Meta-Iでは染色体腕部の中心軸に沿って観察された。さらに、第一分裂後期(Ana-I)から第二分裂中期(Meta-II)にかけて、コンデンシンIは染色体腕部にも観察されるようになり、コンデンシンIIも染色体腕部の軸により明瞭に観察されるようになった。このように、コンデンシンIの腕部への局在化のタイミングは、体細胞における動態から予想されるよりも遅かった。また、減数分裂で昼、コンデンシンIIはGV崩壊後のMeta-I(すなわち二価染色体の形成が完了する時期)になってようやく染色体軸に集中してくるように見える。これらの結果は、コンデンシンが減数分裂において体細胞分裂とは異なる時空間制御を受けることを示している。さらに第一減数分裂におけるコンデンシンの機能をさぐるため、現在抗体のマイクロインジェクションによる機能阻害実験を行なっており、良好な結果を得つつある。
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