本申請課題の目標は、哺乳類の減数分裂におけるコンデンシンと呼ばれるタンパク質複合体の役割を明らかにすることである。哺乳類の体細胞ではコンデンシンIとIIの2つのタイプが存在することが知られているが、卵母細胞におけるそれらの発現は調べられていなかった。申請者は、コンデンシンIとIIのサブユニットの動態をマウス卵母細胞の減数分裂過程において調べることにより、コンデンシンIとIIは共に減数分裂過程において発現しているが、体細胞分裂とは異なる時空間制御を受けることをこれまでに明らかにしてきた。今年度は、卵母細胞内の機能を明らかにするために、コンデンシンの抗体を顕微注入して、減数分裂の進行と染色体の凝縮や分離にどのような影響が出るかを調べた。コントロールとして、IgGを顕微注入した卵母細胞は、16時間の成熟培養後には、ほとんどのものが第二減数分裂中期へと現数分裂が正常に進行した。これに対し、コンデンシンIとIIの共通サブユニットであるmSMC2に対する特異的抗体を顕微注入したときには、抗体量に依存して、mSMC2の過剰な染色体への凝集が観察されるようになり、キネトコアの配向や染色体の形成・分離に異常が見られた。一方、コンデンシンI(mCAP-H)やコンデンシンII(mCAP-D3)の抗体を顕微注入した場合には、前者ではコンデンシンIがセントロメア周辺部へ過剰に凝集し、後者ではコンデンシンIIの染色体への局在が阻害された。また、両者に共通して染色体の形状(凝縮度)に異常が見られた。これらの結果から、2つのコンデンシン複合体は、哺乳類減数分裂においても、正常な染色体の構築や分離に必要であることが示唆された。
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