本年度は、行動あるいは環境応答に関与する遺伝子群を同定するため、イヌフィラリアにおけるRNA干渉法(RNAi)の碓立を行なった。感染ステージであるL3幼虫のL4(宿主ステージ)への発育(脱皮)を指標としてin vitroでの検証を試みるため、イヌフィラリアから発育に関与するとされる遺伝子を単離し、ソーキング法と呼ばれる方法で解析を行なった。この方法は、特定遺伝子の二本鎖RNA(dsRNA)が入った培養液に幼虫を浸すことによって体内に導入する方法であり、これまでに他のフィラリアでは効果が認められているが、イヌフィラリアではまだ報告がない。本研究によって、イヌフィラリアでもL3におけるRNAiの効果が認められたため、このステージでの機能解析が可能であることを示した。加えて、今回の脱皮を指標としたRNAiの実験から、宿主の体内環境とL3の発育との密接な関係性が明らかになり、その条件として高温への移行が必須条件であることがわかった。自由生活性線虫であるC.elegansでは、高温への移行は致死的障害を与え、行動においても高温への移動は忌避を示す事が報告されている。そのため、寄生性線虫と自由生活性線虫では環境刺激に対して異なった応答メカニズムが働いているこどが予想される。そこで、宿主感染における侵入および発育機構を明らかにするためには、他の寄生性線虫を用いることで共通した環境応答メカニズムを明らかにすることが必要と考えられる。
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