エリスロポイエチン(EPO)は、骨髄での赤血球産生に必須の造血サイトカインであり、赤血球減少など血中酸素分圧低下(低酸素)に応じてその血中濃度が調節されている。近年EPOが、低酸素障害回避性の生理活性物質として神経細胞に作用することが報告されているが、生体レベルの脳でのEPO産生および機能機序については不明確なままである。本研究では、微量に発現すると報告されている中枢神経系におけるEPO産生動態および作用部位を明らかにすることを目的とした。低酸素(O_210%)刺激後ラット(Wister、8週齢、雄)から、直ちに目的とする中枢神経系部位(大脳・中脳・海馬・視床下部・嗅球・延髄・下垂体)とEPO-mRNA発現のコントロールとして腎臓も併せて採取した。各組織からRNAを抽出し、RT-PCR法によりEPO-mRNAの発現解析を行い、低酸素刺激時間との関連性を検討した。その結果、中枢神経系では低酸素に応答して全般的にEPO-mRNA産生が起こり、また部位によってもその発現パターンに違いがあることが明らかとなってきた。またその発現様式は中枢神経系部位により大きく2種類に分類できる。すなわち、(1) 定常酸素濃度ではほとんど発現せず、低酸素刺激により増強される。<腎臓・大脳・中脳・視床下部・嗅球>(2) 定常酸素濃度でも発現しており、低酸素刺激によって増強または維持される。<神経性下垂体・腺性下垂体>という2種類に分けられる。
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