腎臓で産生されるエリスロポイエチン(EPO)は、血中酸素分圧低下(低酸素)に敏感に反応して赤血球産生を促進する造血サイトカインである。近年では腎臓以外の異所性微量産生について関心を集めており、本研究代表者もガス環境自動制御チャンバーを用いた低酸素(O_210%)持続刺激に応じてEPO-mRNAがWistar系ラット中枢神経部位(大脳・中脳・海馬・視床下部・嗅球・延髄・下垂体)において広範囲に発現することをRT-PCR法にて確認している。さらに、real time RT-PCR法を用いて中枢神経系部位間でのEPO-mRNA発現量を比較したところ、腎臓および採取した中枢神経系では低酸素刺激の持続によりEPO-mRNAの発現量は増加した。中枢神経系の海馬・視床下部・神経性下垂体では、腎臓に比べて発現量は少ないが、刺激12時間後にEPO-mRNAが最も多く発現し、24時間後には減少する傾向があった。このうち神経性下垂体では定常状態でも他部位よりも強い発現が確認された。また、EPO受容体-mRNAは採取部位すべてに発現していた。中枢神経系において、EPO-mRNAの発現量は持続的低酸素刺激により増加し、腎臓とは異なる時間軸での増減と発現量を示すことと、EPO受容体も広範囲に存在することから、中枢神経系内在性EPOによる局所的な制御機構があることが示唆された。
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