平成21年度は、インターロイキン-19(IL-19)遺伝子欠損マウス(KO)を用いてデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性慢性大腸炎モデルを作製し、炎症性腸疾患におけるIL-19の役割について検討を行った。マウスに2%DSSを飲水にて5目間与え、その後、普通水に戻して5日間飲水させる10日間のサイクルを計3回繰り返し、慢性大腸炎モデルを作製した。飲水開始後、体重、便の固さ、および血便の程度を毎日観察し、大腸炎症状の程度の指標とした。飲水投与開始から30日後の時点で遠位結腸を採材した後、ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色により炎症の程度を観察した。また、リンパ球の動態を観察するために、T細胞と形質細胞に対する免疫染色を行った。さらに、遠位結腸を24時間組織培養した後、産生される各種サイトカインを、ELISAを用いて測定した。その結果、飲水開始30日後における大腸炎の指標はWT、IL-19KOともに回復していた。そのときの遠位結腸におけるHE染色像では、両群ともに炎症反応が見られたものの、その間に顕著な差は認められなかった。免疫染色でリンパ球を観察したところ、形質細胞の発現量はIL-19KOの方がWTと比べて減少していた。組織培養によるサイトカイン産生量は、TNF-αおよびIL-1β産生量がWTに比べてIL-19KOでは有意に増加していた。一方、IL-10およびIL-13産生量はWTに比べてIL-19KOの方が有意に減少していた。以上の結果より、DSS誘発性慢性大腸炎モデルにおいて、IL-19が形質細胞浸潤およびサイトカイン産生能に影響を与えることが明らかとなった。
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