研究概要 |
免疫制御因子であるサイトカインは疾病の進行に密接に関与している。そこで水牛Swamp種およびRiverine種間のサイトカイン発現能の差についてReal-time PCR法を用いて解析した。その結果、Riverine種に比べSwamp種がIFN-γおよびTNF-αを多く発現していた。さらに両品種のIFN-γおよびTNF-α遺伝子のプロモーター/エンハンサー領域の遺伝子解析を行った結果、多型が認められたことからルシフェラーゼアッセイ法による転写活性能を比較検討した。その結果、Swamp種の同領域はRiverine種に比べ高いIFN-γおよびTNF-αの転写活性能を持つことが明らかとなった。一方、牛の東海岸熱は、タイレリアパルバ原虫(Theileria parva)によって引き起こされる原虫疾患で、東および南アフリカで発生し急性で極めて致死率が高いことからアフリカ諸国で問題となっている車要疾患の一つである。その致死率は100%にも至る。我々が開発した原虫定量法で研究調査を行った結果、アフリカに古来より生息する在来種(ザンビア在来種:サンガ種,ケニア在来種:ボラン種,ゼブー種)はT.parvaに感染するが、ホルスタイン種(外来種)が致死的であった原虫感染量に達しても無症状であることが明らかとなった。しかし、なぜこのような疾患感受性の極端な差が導かれるかについては明らかではなかった。そこでザンビア大学獣医学部で、ホルスタイン種を用いて感染実験を行なった。その結果、T.parva感染ダニ暴露後10日目から原虫が検出きれ、原虫の増加とともに病態は悪化した。このときのサイトカイン動態をモニターした結果、IL-18およびIL-6の著しい増加か認められ死に至った。このことから本症の重篤な病態には、他の悪性熱発疾患同様、炎症性サイトカイン、すなわちサイトカインストームが深く関与することが明らかとなった。
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