研究概要 |
本研究では2008,2009年の2年間、アフリカのザンビア共和国で野生サル、ネズミ等を採集し、それ以前に採取された試料も含めて、人獣共通感染症の原因となりうる病原性微生物を探索した。 1.齧歯類の臓器から抽出したDNAからのバクテリア16SリボソームRNA配列の検出と系統解析 2006年から2009年の間にザンビア共和国首都ルサカ近郊およびナムワラ地方で採取したネズミ肝臓DNA中のバクテリア16S rDNAの増幅を試み、増幅された143検体についてシーケンスを行ったところ、6検体からQ熱の原因菌であるCoxiella burnetiiが検出された。その他検体からは通常ネズミ血液中に寄生するBartonella属が多く検出されたことから、この方法がネズミを宿主とする細菌性感染症の探索方法として有用であることが示唆された。 2.培養細胞を用いた動物組織および血清からのウイルスのスクリーニング ザンビアでは2008年9月に新規アレナウイルス(Lujo virus)による出血熱が発生した。そこで、アレナウイルスの一般的な自然宿主であるネズミの腎臓からウイルス探索を試みたところ、case 1の発生地域付近から新規のアレナウイルスが検出された。ザンビアではアレナウイルスの存在は報告されておらず、本研究によってその存在が明らかとできた。また、野生サルからのスクリーニングでは、ワシントン大学との共同研究で次世代高速シーケンサーを用いて網羅的探索を行い、新規のサル免疫不全症候群ウイルス(SIV)の断片を検出した。さらに、ヒト白血病細胞株Molt-4とconcanavalin Aで活性化したサル白血球の共培養により新規SIVの分離に成功した。 本研究で見いだされたウイルスは、既知配列を用いたPCR等の古典的方法のみならず、大規模シーケンスのような網羅的探索によって検出された新種のウイルスであり、その性状を解析していくことでザンビアで発生しうる新たな人獣共通感染症を明らかとすることが期待できる。
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