行動を計測・評価する手法には様々な物が存在しているが、どれも長所と短所が共にあるのが現状である。本研究では、動物実験で良く用いられるげっ歯類を対象に、活発に活動している際の行動を、普遍的に計測する手法の開発を目的とした。この目的を達成するために、超小型型振動記録計をげっ歯類に装着するというアプローチを試みた。昨年に引き続き、ラット及びヌートリアを対象に、従来の飼育ケージより大型の計測箱または野生下での行動評価の可能性を検証した。今年度になり、従来の記録計の50%程度の大きさの記録計(10g)が開発されたため、これの有用性を検討した。記録計で計測された振動を解析するアルゴリズムと、それを実装させたソフトウェアの開発を引き続き行った(Sakamoto et al.2010.PLoS ONE)。これらの結果、ある程度繰り返し発現する行動については、鋭敏に検出することができ、しかも簡便に定量化することが可能となった。また、検出を行う行動パターンを事前に設定する必要が無いことから、汎用性のある普遍的な行動検出システムとして用いることが可能となった。本研究で開発した手法の普及に努めるため、ソフトウェア(Ethographer)にマニュアルを付けた上でウェブサイト上に無料で公開した。また、操作法の習得を容易にするためサンプルデータの公開を行った。公開後、ソフトウェアと解析手法について分かりやすく解説した文書を完備することへの要望がユーザーから多かったため、100ページ前後の解説書を作成し、これも公開した。
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