エボラウイルスのnucleoprotein (NP) タンパク質はゲノムRNAと結合し、らせん複合体を形成する。このらせん複合体はゲノムRNAの転写および複製を担うヌクレオカプシドのコア構造を構成すると考えられるが、その詳細は明らかではない。本課題では、NPタンパク質およびNPタンパク質が形成するらせん複合体の生化学的性状および立体構造を明らかにすることで、ゲノムRNAの転写および複製機構の解明に寄与することを目的とした。初めに、NPタンパク質を哺乳類細胞に発現させ、NP発現細胞かららせん複合体を精製した。らせん構造を形成するNPは細胞由来のRNAと結合していた。また、RNase処理を行うと、NPと結合したRNAは分解されることがわかった。今度は、らせん複合体を様々な塩濃度のバッファーで透析すると、低塩濃度でらせん構造がゆるみ、らせん構造が伸展することが明らかになった。続いて、塩濃度を生理的条件に戻すと、らせん構造が閉じ、元の構造に戻ることがわかった。このような構造的可塑性は、NPに結合したRNAを分解すると失われた。以上の結果から、NPに結合したRNAはらせん複合体を構成する構造因子であり、らせん複合体に構造的可塑性を与えることが明らかになった。
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