クラミジア(Chlamydia)は、偏性細胞内寄生性を示し、宿主細胞内では封入体と呼ばれる膜構造中で増殖を行う。封入体の形成は、クラミジア属最大の特徴であり、本菌の細胞内増殖性に重要な役割を果たしている。本年度は、クラミジアの封入体形成機構を解明する目的で以下の実験を行った。クラミジアとしては、人獣共通感染症であるオウム病の原因となるC. psittaci Mat116株を用いた。HeLa細胞にC. psittaci感染24時間後に感染細胞を0.25Mショ糖存在下で抽出し、遠心作業を繰り返すことによりクラミジア封入体膜画分の調製を試みた。得られた各分画を不活化C. psittaci免疫ウサギ血清およびC. psittaci感染マウス血清を用いたウエスタンブロットに供した。各画分においては、Pmp、MOMP、Hsp等クラミジアの外膜抗原と予想されるバンドが認められた。封入体膜画分と予想した画分においては、感染免疫血清において強度に反応する分子量15-20kDのバンドが幾つか認められた。これらのバンドは、不活化クラミジア免疫血清では認められず、また精製クラミジア粒子を抗原とした場合にも認められなかった。以上により、感染細胞内において特異的に発現するクラミジア抗原を含む分画を得ることが出来た。現在は、この分画をウサギに免疫し、抗血清を作製している。次年度は得られた血清を用いて、C. psittaciライブラリースクリーニングを行い、感染細胞内で特異的に発現する封入体膜構成成分の同定を目指す。また、本年度論文発表したネコクラミジア感染特異抗原CF0218を抗原とした、ネコクラミジア抗体検出系を樹立し、全国の飼いネコにおけるネコクラミジア保有状況の疫学調査を行った。
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