クラミジア(Chlamydia)感染症のうち、C.psittaciによるオウム病は愛玩鳥からヒトに感染する人獣共通感染症である。クラミジアは、偏性細胞内寄生性を示し、封入体と呼ばれる膜構造中で分裂増殖する。封入体の形成は、本菌の細胞内増殖性に重要な役割を果たしている。クラミジア種・株間においては、封入体の形態に多様性があることが知られているが、病原性との関連等生物学的な意義は不明である。本研究では、C.psittaci封入体形成機構を、由来の異なる株間で比較することにより、病原性との関連について明らかにすることを目標とした。昨年度までに作出した抗封入体画分を含む抗血清を用いた、C.psittaciライブラリースクリーニングにより、多型膜蛋白質Pmpをコードするクローンを得た。組換えPmpは、感染動物血清と反応し診断用抗原としての有用性が示唆された。また、得られたPmp(PmpXとする)は、他のPmpファミリーと比較して分子量、等電点が低かった。PmpXに対する抗血清を作製し、C.psittaci感染細胞における局在を検討したところ、外膜蛋白質のみならず分泌性蛋白質として機能することを示唆するデータを得た。Pmpファミリーの構造は、クラミジア種間で異なることが報告されている。C.psittaciゲノムの詳細なアノテーションを行い検討したところ、Pmpファミリーは20存在しており、他の既読動物由来クラミジアと同程度であった。現在は、特にC.psittaciのPmpファミリーとPmpXに着目し、その宿主特異性、封入体形成を含めた病原性への寄与についての検討を進行中である。また、昨年度論文発表したネコクラミジア感染特異抗原CFO218(本抗原も封入体形成因子候補である)を抗原として用いた、飼いネコにおけるネコクラミジア保有状況の疫学調査について、現在論文投稿中である。
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