研究概要 |
本研究では、プリオン蛋白質(PrP)遺伝子欠損マウス神経細胞株(HpL)に欠損変異マウスPrP遺伝子もしくは異種PrP(ハムスター、ウシ)を導入した細胞のライゼートを正常型PrP(PrPC)供給源としてprotein misfolding cyclic amplification (PMCA)を行うとともに、マウススクレイピープリオンもしくは異種プリオン(それぞれハムスタースクレイピープリオン、Bovine spongiform encephalopathy (BSE)プリオン)存在下で、異常型PrP(PrPSc)増幅の有無からPrPSc増幅に必要なPrPC領域の同定および異種PrPScの増幅系の構築があるかの基礎的データを得ることを目的とした。昨年度は、HpLにマウスPrPや異種PrPを発現させて調整した細胞ライゼートの作製を行ったが、本年度はPMCA法によるハムスター263K株、マウスObihiro株、マウスChandler株の試験管内増幅による比較を行った。その結果、263K株とChandler株は脳ホモジネートをPrPC供給源とした場合、既存の条件(1% TritonX-100, 4mM EDTA含PBS、40 cycle)でPrPres(蛋白質分解酵素抵抗性PrP)の増幅が可能であったが、Obihiro株では同条件では増幅がされなかった。さらに、HpLにマウスPrP遺伝子やハムスターPrPを導入した細胞の細胞ライゼートをPrPC供給源として試験管内増幅を行ったところ、同条件では263K株とchandler株のいずれも増幅がされなかった。これらのことから、プリオン株ごとに条件設定が必要であるとともに、細胞ライゼートを用いた場合、脳ホモジネートの条件とは異なる増幅条件が必要であることが明らかとなった。本研究の結果から、PMCA法によるPrPresの増幅条件はプリオン株やPrPC供給源の性状ごとに最適化する必要があることが明らかになったとともに、動物を用いないプリオン検出系として、広範なプリオン株に適応可能なPMCA条件の構築が必要であることが示唆された。
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