BoNT/Bに感受性のあるPC12細胞を確立するために、受容体タンパク質シナプトタグミンII (StgII)遺伝子をクローニングしたレンチウイルスベクターを用いてPC12細胞への導入方法を検討した。ウイルスを媒介する方法よりもリポフェクタミン試薬を用いる方が、StgII遺伝子の導入効率が高く、発現量が多いことがわかった。StgII発現PC12細胞はStgIIN末端のポリクローナル抗体による免疫染色を行い、特異的にStgIIが発現していることを確認した。StgII発現PC12細胞に対し、BoNT/Bの作用を効果的に発揮する条件を調べた。BoNT/Bを無血清培地で18時間処理するよりも、BoNT/Bを高カリウム溶液で15分処理し、維持培地で24時間培養後の方が細胞内基質であるシナプトブレビン2(VAMP2)の切断程度が高かった。高カリウム刺激によりシナプス小胞のリサイクリングが活性化され、細胞表面に結合したBoNT/Bが一気に取り込まれ、VAMP2の切断程度が高くなったと考えられた。StgII発現PC12細胞にガングリオシドmixtureを添加すると未添加に比べ、BoNT/BによるVAMP2の切断の程度が増強した。これらの成績は、ガングリオシドはStgIIと相補的にBoNT/Bの受容体として利用し、細胞内に侵入後、作用を発揮することが示唆され、StgII発現PC12細胞がこれらの機構を明らかにするツールとなり得ることが予想された。
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