ボツリヌスB型神経毒素(BoNT/B)の受容体はシナプトタグミンI(StgI)およびII(StgII)とガングリオシドGT1bの複合体であることが明らかになっている。StgIは中枢神経系にStgIIは末梢神経系に多く発現している。BoNT/Bの重鎖C末端領域は、神経伝達物質の開口放出に伴いシナプス小胞内腔に突出しているStgIIのN末端領域とガングリオシドGT1bの複合体と高い結合親和性を示し、神経細胞内に侵入することにより作用を発揮すると考えられている。PC12細胞にStgII遺伝子を発現することにより、BoNT/Bに感受性のあるPC12細胞を確立し、StgIIのBoNT/B受容体としての機能解析を行った。StgIIのPC12細胞での発現は、immunoblotと免疫染色法により確認した。StgII発現PC12細胞はBoNT/B処理により基質であるVAMP2が切断され、高カリウム刺激によるドーパミンの放出阻害活性が有意に低下していた。またStgII発現PC12細胞にガングリオシドを添加するとBoNT/Bの作用が増強された。ガングリオシドを添加したPC12細胞はBoNT/B処理によりVAMP2が切断され、StgI欠損PC12細胞にStgII遺伝子を発現すると、VAMP2が切断された。StgIはガングリオシド存在下、StgIIは単独でBoNT/Bの受容体として機能することが分かった。
|