研究課題
本年度は、アトピー性皮膚炎局所病態形成におけるケラチノサイトの役割と治療標的の可能性を、マウスおよびイヌを用いて明らかにした。まず、前年度に確立したマウスケラチノサイト分離・培養方法を用いて、ケラチノサイトとマスト細胞のクロストークを解析した。マウス骨髄由来マスト細胞をIgEおよび抗原により刺激し脱顆粒させた後、その培養上清とケラチノサイトをin vitroで共培養した。その結果、マスト細胞の脱顆粒上清によって刺激したケラチノサイトにおいて、アトピー性皮膚炎や喘息などの病態を開始させるために重要な様々な因子の発現が上昇することを明らかにした。このことから、アトピー性皮膚炎局所病態発現におけるケラチノサイトとマスト細胞のクロストークの重要性が示唆された。次に、アトピー性皮膚炎を自然発症するイヌを用いて、ケラチノサイトが皮膚炎や痒みの治療標的となるか否かを検討した。この目的のため、皮膚炎を自然発症し痒みを主症状とするイヌを対象として、CaやMgイオンを含まない高純度軟化水を用いたシャンプー療法を行い、その臨床的効果を検討した。その結果、高純度軟化水によりシャンプーした群では皮膚炎および痒みが有意に減少したが、対照として用いた水道水によるシャンプーを行った群では両スコアの有意な減少は認められなかった。これらの結果から、表皮を低Caおよび低Mg環境にすることによって、皮膚炎および痒みを軽減できる可能性が明らかとなった。
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Veterinary Dermatology (In press)
Research in Veterinary Science (In press)
Journal of Veterinary Medical Science 72(2)
ページ: 131-140