本研究では、青森県で犬バベシア症を自然発症した土佐犬から分離したBabesia gibsoni連続培養株を用いて、本株増殖に対する牛由来および犬由来非鉄結合型トランスフェリン、牛由来鉄結合型ラクトフェリンの影響についての検討を行った。原虫は牛胎児血清(FBS)に順化させた株および犬血清に順化させた株の2種類を用いて行った。さらに、real-time PCR法を用いたin vitroにおけるB. gibsoni薬剤感受性試験の評価方法の確立を行った。 B. gibsoni両株の増殖に対する、牛由来および犬由来非鉄結合型トランスフェリンおよび牛由来鉄結合型ラクトフェリンの影響に有意差は認められなかった。またreal-time PCR法を用いた評価方法は、従来の塗抹標本を用いた方法と比較して、特に培養初期における少数の原虫の定量性に優れており、高い精度での評価が可能であることが示された。 今回得られた結果は、トランスフェリン結合鉄の取込を評価する際に有用な情報となることが期待される。また今後の原虫増殖抑制試験には、今回確立されたreal-time PCR法を用いて行い、より鋭敏な感度での評価を行う予定である。
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