前年と同様に犬の門脈圧亢進症(PH)の臨床的考察を行うことで、PHは犬の慢性肝疾患(慢性肝炎・肝硬変:CH)と原発性門脈低形成(PHPV)で発生か最も多いことが明らかとなってきた。特にPHPVは、他の動物やヒトで認められない疾患であり、その病態は犬の先天性疾患である門脈体循環短絡(CPSS)と類似点が多く認められた。門脈/大動脈(PV/Ao)比が門脈圧(脾髄内圧)と相関することが研究結果で明らかとなり、その有効性が期待される。われわれは正確にPV/Ao比を評価するためにCTを採用して評価した。その結果、CPSSのPV/Ao比は0.29であるのに対し健常犬では1.07と有意に縮小していた。さらに、PHを伴ったCHのPV/Ao比は1.55と拡大していたが、PHを伴ったPHPVのPV/Ao比は0.27と縮小しており、PHPVのPHではCPSSと同様の傾向が認められることが明らかとなった。以上のことから、PHPVが肝内の門脈だけでなく肝外の門脈も低形成であることに起因していると推察された。そのため、犬のCHとPHPVのPHは病態大きくが異なることが明らかとなった。今後は超音波を用いて門脈血流量を測定することで血管抵抗を評価しさらに犬の肝疾患におけるPHの病態を評価することが可能と思われる。
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