研究課題
本研究では、細胞膜修復仮説をもとに鍵分子であるSYT1について、相互作用因子とそれらの凍結耐性における機能を解析する。哺乳類のシナプトタグミンに関する知見から膜融合装置SNAREタンパク質との相互作用が予測されるが、植物では実証例はなく、凍結耐性への関与も不明である。今回の研究期間内では、(1)相互作用因子をシロイヌナズナのゲノム情報と生化学的な手法を組み合わせて探索することで、動物細胞との類似点と相違点を明らかにする。さらに、(2)同定した相互作用因子の凍結耐性のカルシウム依存性への寄与を遺伝学的な方法で解析する予定である。本年度の成果:前年度の解析からSYT1は植物の細胞膜のみに局在することがわかった。これは、細胞膜のリン脂質もしくはタンパク質と相互作用していることを示唆する。そこで、SYT1のアミノ酸配列を部分的に欠失するタンパク質をシロイヌナズナプロトプラストで発現させ、その局在性を調べた。シナプトタグミンはN末端側に膜貫通ドメインを一つ、C末端側に2つのカルシウム結合ドメイン(C_2AとC_2B)を持つ。解析の結果、C_2AとC_2Bが並列に並んでいること、さらに、C_2Bドメインのカルシウム結合モチーフが細胞膜への局在に重要であることがわかった。このC_2Bのカルシウム結合モチーフを他の相同なタンパク質と比べたところ、SYT1の分子進化の過程で双子葉植物と単子葉植物の種分化の前に生じた変化であることが示唆された。このことはSYT1と細胞膜の相互作用が植物の進化の過程における高い凍結耐性の獲得に極めて役割を果たしたことを強く示唆する。
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Cryobiology and Cryotechnology (未定, 印刷中)
Cryobiology and Cryotechnology 55(1-2)
ページ: 27-34