研究概要 |
本研究は、マメ科植物Sesbania rostrata (セスバニア) -根粒菌Azorhizopbium caulinodansの共生系において、「窒素固定期間を長くし」、かつ、根粒菌が進化させた「ATP利用効率の最適化」を敢えて「非効率化」することにより、この共生系のリン酸要求量を増大させることを目的としている。「根粒の寿命に関与するであろうphrR遺伝子の機能解析」および「ATP依存型・非依存型のカリウム・リン酸輸送系制御の解析」を行うことでA. caulinodansの茎粒内での生存戦略およびATP消費節約戦略に関する新たな知見を見いだす基礎的研究を実行する。 (1) phrR遺伝子に関して : A. caulinodansのphrR遺伝子にコードされる推定転写因子 (PhrR) により制御される遺伝子群の探索を行うために、マイクロアレイ解析を行った。その結果、phrR遺伝子破壊株では機能未知な低分子タンパク質をコードする遺伝子群の発現が恒常的に高くなることがわかり、PhrRはおそらくこれらの低分子タンパク質遺伝子群の発現を抑制する転写因子である推測された。 (2) カリウム吸収系に関して : A. caulionodansは少なくとも3種類のカリウム吸収システム (Kup, Kdp, Trk) を持つことがゲノム配列から判明した。これらのシステムをそれぞれ破壊した株を作製し、茎粒形成能を評価したところ、茎粒におけるカリウム吸収はATP非依存型のKupシステムのみに依存していることが判明した。また、KupおよびTrkの両システムを破壊した株ではATP依存型のKdpシステムが恒常的に発現し、窒素固定能を持つ茎粒を形成した。このことからKupシステムに依存せずとも茎粒内でカリウムを吸収できることが判明した。
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