本研究は、マメ科植物Sesbania rostrata(セスバニア)-根粒菌Azorhizopbium caulinodansの共生系において、「窒素固定期間を長くし」、かつ、根粒菌が進化させた「ATP利用効率の最適化」を敢えて「非効率化」することにより、この共生系のリン酸要求量を増大させることを目的としている。「根粒の寿命に関与するであろうphrR遺伝子の機能解析」および「ATP依存型・非依存型のカリウム・リン酸輸送系制御の解析」を行うことでA.caulinodansの茎粒内での生存戦略およびATP消費節約戦略に関する新たな知見を見いだす基礎的研究を実行する。 前年度では、phrR様遺伝子(praR遺伝子と命名)破壊株においては低分子タンパク質をコードするreb遺伝子群の発現が野生型株に比べ高くなることをマイクロアレイにより見いだしたことを報告した。一方、Omp25/Omp31ファミリータンパク質の一つをコードする遺伝子およびフラジェリンタンパク質の一つをコードする遺伝子の発現はpraR破壊株において野生型株に比べ低かった。praR破壊株においてこれらの低発現遺伝子群のプロモータを改変し、野生型株と同等な発現レベルになる株群を作製したが、これらの株による茎粒は、praR破壊株と同様に、窒素固定活性を失った茎粒のままであった。このことから、praR破壊株が正常な茎粒を形成できない原因は、これらの遺伝子の発現レベルが低いことではないと判断した。
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