研究概要 |
水環境中における有機物組成の季節的、および、地理的変動を明らかにするため、小川原湖の主要な流入河川である高瀬川と、その支流(坪川、作田川、砂土路川、古間木川)に計12地点の水質モニタリング地点を設け、1ヶ月に一度、定期的に水試料を採取し、pH、EC、DO、SS、無機イオン濃度、および、溶存有機態炭素、全窒素、全溶存態窒素、全リン、全溶存態リンの各濃度を測定した。さらに、DOMの性質を、EEM(Hodba Jobin-Yyon, Fluoromax-4)、紫外線可視吸収スペクトル(島津紫外可視分光光度計UV-1800)を用いて経時的に測定した。得られたEEMは、PARAFACモデルを用いて統計解析を行うことにより、蛍光成分の抽出と、DOM組成の季節的、および、土地利用の違いによる変動を調べた。その結果、研究対象とした水環境中のDOMは、7種の蛍光成分を持つことが明らかとなった。蛍光成分組成を用いた各水試料の主成分分析より、小川原湖のDOM組成は河川のそれと大きく異なることが明らかになった。また、流域内に著しく高い森林面積率を示した坪川は、ほかの河川とDOM組成が異なっていた。しかしながら、概して、季節によるDOM組成の変動の方が、河川間のDOM組成の変動よりも大きかった。DOMの反応性、機能はその組成による異なる。したがって、河川から流入するDOMが小川原湖の生物地球化学的過程に及ぼす影響は、季節により異なると考えられた。
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