研究概要 |
青森県内を流れる高瀬川水系(小川原湖を含む)から21地点を選び、平成21年4月~平成22年3月にかけて月に1度採水した。得られた水試料に含まれる溶存有機物(DOM)の組成の季節的、および、土地利用の違いによる変動を三次元蛍光スペクトル測定(EEM)とPARAFACモデルを用いた統計解析の組み合わせ(EEM-PARAFAC)により調べた。また、調査した河川のうち、最も水田利用率、畑利用率、森林利用率の高い河川、および、最も流域の大きい河川4河川を選び、5月(春),7月(夏),9月(秋)に水試料を採取し、DOMの微生物分解性と光分解性を培養実験により調べた。河川に含まれるDOMの質(蛍光特性)は、河川間の違いよりも、季節による違いが大きく、その違いの要因の一つに水田の営農が考えられた。つまり、作付期には、湛水され、河川の一部となった水田から流出されるDOMがDOMの水質に大きく影響を及ぼす一方、非作付期は、より河川内で生産されるDOMの寄与が大きくなることが考えられた。河川中に含まれるDOMは、微生物よりも光に対する分解性が大きいことが示された。また、DOMの光分解性は、季節により、また、河川により異なっていた。 溶存有機物は、微生物の栄養源になったり、光吸収能により水環境中の光合成に影響を及ぼすなど、水域生態系で果たす役割は大きいが、その役割はDOMの質により異なる。本研究より、DOMの質が季節的に異なることが示された。したがって、DOMが小川原湖の物質循環過程に及ぼす影響も季節的に異なる可能性があげられた。
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