研究課題
堆肥化処理において亜硝酸蓄積に起因するN_2Oの発生を抑制する亜硝酸酸化促進法の適応可能範囲を明らかにするため、堆肥化過程の窒素遷移とN_2O生成に重要な影響を及ぼすアンモニウム生成能について検証を行った。牛ふん堆肥化では、豚ぷん堆肥化で観察されたような亜硝酸酸化細菌の大幅な増殖遅延は起こらず、そのため堆肥化後熟期のN_2O発生量は微量であった。一方、鶏ふんではN_2O生成の起点となる硝化作用自体が起こらず、堆肥化期間全体を通して発生するN_2O量は非常に少なくなった。このような畜種毎に異なる窒素遷移とN_2O生成に関する特徴は、排泄物がもつ活性窒素放出能の違いに起因すると考えられたため、培養試験により、微生物分解によって生成される最大アンモニウム態窒素(NH_4^+-N)量を測定した。豚ぷんでは有機物(OM)1gあたり6.3±1.8mg(平均±標準偏差)のNH_4^+-Nが生成された。牛ふんでは、アンモニウム生成能は0.5±0.4mg NH_4^+-N/g OMとなり、一方、鶏ふんでは25.8±8.4mg NH_4^+-N/g OMとなった。鶏ふんは尿が尿酸の形でフンと一緒に排泄されるため窒素含有量が高く、生成されるNH_4^+-N量が著しく多くなり、そのため遊離NH_3によって硝化が完全に阻害されたものと考えられた。鶏ふんとは逆に、牛ふんでは硝化細菌の活動を阻害するほどのNH_4^+-Nは生成されず、そのため速やかに完全硝化が復活するものと考えられた。以上の結果から、亜硝酸酸化促進法は牛ふんと鶏ふんでは豚ぷんほど効果は期待できないこと考えられた。しかし排泄物中の窒素量は飼料により大きく影響されることから、全ての牛ふんと鶏ふんについて亜硝酸酸化促進法の適応可能性を否定するものではない。また、豚ぷんに近いアンモニウム生成能を示す他の有機性廃棄物の堆肥化においても亜硝酸酸化促進法が適応できる可能性あると考えられる。
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Bioresource Technology
巻: 102 ページ: 1468-1474