研究概要 |
ブトキシカルボニル化ジアミノピリジンを核酸塩基とする架橋型人工核酸モノマー(I)を含むオリゴヌクレオチドの8-ヒドロキシグアニン認識能を、さまざまな塩基対を有する2重鎖DNAに対して形成する3重鎖核酸の融解温度(Tm)またはゲルシフトアッセイ結果を指標とすることで評価した。この新規架橋型人工核酸モノマー(I)は、2重鎖DNA中の8-ヒドロキシグアニンを3本のHoogsteen型水素結合により認識し、これまでに開発したアセチル化ジアミノピリジンヌクレオシド類縁体よりも8-ヒドロキシグアニン : シトシン塩基対を選択的に認識する能力が高く、ほぼ完壁に他の天然塩基対を区別出来る事が分かった(ΔTm : 8-15℃)。さらに、この8-ヒドロキシグアニン認識プローブを初代架橋型人工核酸(2', 4'-BNA)修飾することでDNAとの結合性を強化し、生理的条件下での高い8-ヒドロキシグアニン : シトシン塩基対認識能(ΔTm : 18-21℃)の獲得に成功した。このことは、遺伝子配列特異的に8-ヒドロキシグアニンを検出するプローブ素材の創製に成功した事を意味している。 また、より効率的な水素結合形成を目的として環構造を再検討した4, 8-ジオキサ-5-アザビシクロ[5.3.0]デカン骨格を有する人工核酸とN-Oと結合を環構造に有する人工核酸を新たに設計し、チミジンまたは5-メチルウリジンを出発原料とした合成に成功した。 さらに、合成した8-ヒドロキシグアニン認識プローブが、8-ヒドロキシグアニン : シトシン塩基対を含む二重鎖DNAから8-OH-Gを除去する酵素Fpg(大腸菌)またはhOGG1(ヒト)の存在下においても強固に三重鎖を形成可能である事を、蛍光標識化核酸を用いることにより示し、少量しか存在しない遺伝子損傷の検出プローブとして有効である事を明らかにした。
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