遺伝子損傷の集積は、癌や老化だけでなく、糖尿病やパーキンソン病、アルツハイマー病、さらにはHCV感染時など実に広範な領域において発生することが明らかにされており、医・薬学における重要な研究課題である。本研究では非侵襲的な遺伝子損傷(特に8-ヒドロキシグアニン)の二本鎖DNA配列選択的な検出法の開発を目指し研究し、以下のような成果を得た。 まず当初計画通り、平成20年度に開発に成功した8-ヒドロキシグアニンを遺伝子配列特異的に認識するプローブ素材であるブトキシカルボニル化ジアミノピリジンを核酸塩基とする架橋型人工核酸モノマーを約1グラム合成し、多様な用途への迅速な適用が可能な態勢を整えた。続いて、合成したブトキシカルボニル化ジアミノピリジン型架橋型人工核酸モノマーと酸分解性ホスホロアミダート結合を組み合わせた三重鎖形成核酸プローブを設計合成するとともに、非侵襲的可視化に対応可能な蛍光化に成功した。また、本三重鎖形成プローブを用いて二重鎖DNA中の8-ヒドロキシグアニンの検出を検討し、本プローブが弱酸性条件と標的8-ヒドロキシグアニン含有二重鎖DNAの存在が揃う事によって効率的に機能する事を確認した(標的無しに比べ7倍効率的)。この際、昨年度検討したに中性条件とは分子認識能(特にグアニンに対する認識能)が変化する事を明らかにした。 さらに、8-ヒドロキシグアニンと同様に高い頻度でDNA中に発生することが知られている酸化損傷塩基5-ホルミルウラシルとの交差認識を検討するため、そのDNA中への導入用分子として光刺激によって5-ホルミルウラシル発生する光応答性人工核酸の開発に成功した。(論文投稿中)
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