研究概要 |
本研究は、新規抗がんおよび抗HIV治療薬のシーズとして期待されているジテルペノイド天然物であるユーフォルビア類、中でもlathyranoic acid A, Euphorbia factor L_<11>, lathyranone A, lagaspholones AおよびBの5種類の天然物を選定し、これらを基軸とした系統的なエナンチオ合成を行うこと、並びに大量合成、類縁体合成を視野に入れた全合成ルートを構築することを目的として行った。本年度は、これらの天然物の全合成を行う上で、鍵反応となる分子内[2+2]環化反応を応用した新しい不斉マクロ環化反応の開発・検討を行うためモデル化合物を用いて検討した。その結果、最適なケトジエン化合物を合成し光学活性なキラル有機アンモニウム塩すなわち、H-L-Phe-L-Leu-N (CH_2CH_2)_2-reduced triamine・C_6F_5SO_3Hおよび (S) -1,1'-binaphthy1-2,2'-diamine・HNTf_2とルイス酸(AICl_3など)を作用させ、分子内[2+2]環化反応を行い、良好な不斉および化学収率で望む[2+2]環化体が得られることがわかった。現在、反応条件の最適化を行うと共に、続く不斉転写型環拡大反応を検討しているところである。一方、モデル化合物の合成で得られた知見を応用して、他の生理活性天然物の全合成を達成することができた。すなわち、マクロ環化反応の合成法を応用してヒストン脱アセチル化酵素阻害物質であるスピルコスタチンA, BおよびFK228の全合成を達成し、さらに、アミドの脱保護条件の検討から得られた知見を応用して抗インフルエンザAウイルス活性を有する(+)-スタキブリンの全合成も達成することができた。
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