研究概要 |
本研究は、新規抗がんおよび抗HIV治療薬のシーズとして期待されているジテルペノイド天然物であるユーフォルビア類、中でもlathyranoic acid A,Euphorbia factor L_<11>,lathyranone A,lagaspholones AおよびBの5種類の天然物を選定し、これらを基軸とした系統的なエナンチオ合成を行うこと、並びに大量合成や類縁体合成を視野に入れた全合成ルートの開発を目的として行った。本年度は、平成20年度に開発・検討した分子内[2+2]環化反応を応用し、5員環化合物への環拡大反応の検討を行った。はじめに、この新しい不斉環拡大反応の開発・検討を行うためモデル化合物を用いて検討した。その結果、予想通り最初の[2+2]環化反応で形成された不斉炭素を足がかりとした環拡大反応が進行し、望む5員環モデル化合物を良好な化学収率および不斉収率で得ることに成功した。なお、位置選択性に関しては中程度の結果となり、詳細な反応条件およびメカニズムに関しては来年度に検討する予定である。現在は、反応条件の最適化を行うと共に、位置選択性の向上および全合成への応用を検討しているところである。一方、モデル化合物の合成で得られた知見を応用して、以下の生理活性天然物の全合成も達成することができた。すなわち、免疫抑制物質であるナランタリド、セスクイシリンおよびカンデラリドA,B,Cの5種類の全合成を達成し、さらに、これらの全合成からベンジル系保護基の新しい脱保護条件を見出すことに成功した。この保護・脱保護条件は本研究課題であるユーフォルビア類の全合成に使用する予定である。
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