研究概要 |
本研究は、新規抗がんおよび抗HIV治療薬のシーズとして期待されているジテルペノイド天然物であるユーフォルビア類、中でもlathyranoic acid A, Euphorbia factor L_<11>, lathyranone A, lagaspholones AおよびBの5種類の天然物を選定し、これらの基軸となる系統的なエナンチオ合成を行うこと、並びに大量合成や類縁体合成を視野に入れた全合成ルートの開発を目的として行った。 本年度は、平成21年度に確立した分子内[2+2]環化を鍵反応とした環拡大反応を行い、望む5員環セグメントの合成を達成した。さらに、2つのカップリングセグメントの合成を検討した。その結果、これらのセグメントを合成する上で、新しい脱保護反応の開発に成功した。すなわち、複数のアルコール部に対してベンジル系の置換基で保護した際、3,4-ジメトキシベンジル(^<3,4>DMB)基のみを選択的に脱保護可能となる新しい方法論を確立した。これは、芳香環がより電子豊富である^<3,4>DMB基に対して、超原子価ヨウ素試薬であるフェニルヨード(III)ビストリフルオロアセテート(PIFA)を温和な反応条件下作用させることにより容易に脱保護することができる。この脱保護反応は、一般的に用いられているDDQやCANの代替えとなる環境を配慮した手法でもある。さらに、この方法論を応用することにより、酸素原子上ばかりでなく、窒素原子上の^<3,4>DMB基も脱保護することが可能である。また、天然物を合成する上で全体の工程数を短縮でき、さらには、様々な有機化合物を効率的に合成する手法となることが期待される。
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