研究概要 |
分子内オキシム-オレフィン環化付加反応はN-無置換イソキサゾリジンを構築できる非常に有用な反応である。本反応はオキシムからNH-ニトロンへの異性化を経て反応が進行するが、NH-ニトロンへの異性化が熱力学的に不利である事が知られている。従って、反応には高温条件が必須であり、基質は制限されていた。それに対し、我々は2つの親和性(窒素とホウ素、ケイ素と酸素)を用いる事により、この問題を解決している。即ち、TBSで保護されたオキシムに対してBF3-OEt2を作用させる事で、緩和な反応条件下でボラノニトロンを発生させ、アルケン類との分子内環化付加反応の開発に成功している。平成20年度において、本手法を分子間反応へと適用したところ、エチルグリオキシレート-O-tert-ブチルジメチルシリルオキシムから発生したN-ボラノ-C-エトキシカルボニルニトロンは、アルケン類と分子間環化付加反応を起こし、3,5-trans-イソキサゾリジンを立体選択的に与えることを見出した。平成21年度は、tert-ブチルジメチルシリルオキシイミノ-N,N-ジメチルエタンアミドを用いて本環化付加反応を検討した。その結果、3,5-cis-イソキサゾリジンが立体選択的に得られることが分かり、また反応中間体が(Z)-2-ジフルオロボルノオキシムイミノ-N,N-ジメチルアセトアミドであることを見出した。本反応で末端アルケンと反応して得られたイソキサゾリジンを変換反応に付すことで、1,3-syn-アミノアルコールへと導くことにも成功した。 平成22年度は、tert-ブチルジメチルシリルオキシイミノ-N,N-ジメチルエタンアミドを用いる上記反応の適用範囲拡大を目指し、検討した結果、様々なアルケンと反応することが分かり、収率良く3,5-cis-イソキサゾリジンが得られてくることを見出した。
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