研究概要 |
パラジウム触媒による付加反応を鍵とするタンデム型ヘテロ環構築反応の開発を目的として触媒系の最適化、付加反応の高効率化、およびタンデム型反応への応用を行った。本反応開発では、申請者によって開発されたC-S二座型配位子を用いることで反応効率向上及び優れた基質一般性の実現を試みた。本配位子は、主配位部として含窒素複素環カルベン、副配位部としてチオエーテル基を有し、その柔軟性に富んだ配位によって金属触媒の性能を高めることを可能とする。 まず最初に、触媒系の最適化では含窒素複素環カルベン前駆体を基盤とするC-S二座型配位子を種々検討したところ、2, 6-ジイソプロピルフェニル基および2-ジフェニルチオエーテル基を有するものが最良の結果を与えた。また、基本となる付加反応の有用性を高めるために、合成が容易で安定性に優れる有機三フッ化ホウ素塩を用いた反応系を検討したところ、水を共溶媒とすることで反応が高効率的に進行することが明らかとなった。 これらの検討により、触媒系の高効率化および反応系の基質一般性が優れたレベルで達成され、これらの成果をフタライド骨格構築を標的としたタンデム型付加環化反応へと応用した。初期検討段階にあるため収率は中程度ではあるが、本反応系を用いることでタンデム型ヘテロ環構築反応が進行することが明らかとなった。今後、反応条件を検討することで収率の向上および基質一般性の確立が可能であると期待される。
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