研究概要 |
近年,いわゆる生活習慣病が一個人に複数集積する状態である"メタボリックシンドローム"が,動脈硬化性疾患発症の背景として重要であることが明らかとなっている.本症候群は単に多数の因子が偶然集積したものではなく,その上流に内臓脂肪の蓄積が成因基盤として存在していることが知られている.我が国においても生活習慣の欧米化が進み,いわゆる生活習慣病の病態を呈する人口が増加しており,この背景には過食および過剰な脂肪摂取,運動不足やストレスなどが要因の肥満症(脂肪組織の蓄積)があることは明白である.本研究では,伝統・伝承薬物として薬用に供される一方で,食材としてあるいは料理の香味付けやスパイスなどの食用としても用いられる薬用食品素材について,マウス初代培養肝細胞およびヒト肝がん由来HepG2細胞を用いた細胞内の中性脂肪蓄積量(あるいは残存量)を指標とした評価系を用いた広範なスクリーニング試験をおこない,脂肪蓄積抑制作用および脂肪代謝促進作用成分の探索を実施することを目的とする.最終年度である今年度は,昨年度に見い出した中性脂肪吸収作用および脂肪蓄積抑制作用シーズについて,以下の研究成果を報告した.i).タイ産ムクロジから中性脂質吸収抑制サポニン,ii).ベンケイソウ科植物である垂盆草からHepG2細胞を用いた脂肪蓄積抑制作用メガスチグマン化合物,iii).西洋ハーブのエバーラスティングフラワーや香辛料であるコショウ科植物Piperchabaから,アディポサイトカインのひとつであるTNF・αに対する感受性を低減する低分子化合物を見い出した.本研究により見い出された低分子化合物が,内臓脂肪蓄積に起因するメタボリックシンドロームの改善作用を有する医薬シーズとして期待できるとともに,これら薬用食品素材が予防的見地から有用な機能性食品の開発につながる成果であると考える.
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