本年度は、測定対象ペプチドとしてアンジオテンシンIIをとりあげ、安定同位元素標識ペプチドの調製および抗体固定化プレートの調製とMALDI-TOF-MSを用いた分析条件の検討、定量性の評価を行った。 内標準ペプチドとしてアンジオテンシンIIの安定同位元素標識体を調製を試みた。調製コストの軽減も視野に入れ、^<18>O標識水とメタノールの混液中、塩酸触媒でのエステル化・加水分解反応の平衡を利用しアンジオテンシンII1分子あたり最大4個の^<18>Oを導入可能であることを明らかにした。また、この反応により調製した^<18>O標識アンジオテンシンIIは、UV検出HPLCにて精製し、MALDI-TOF-MSにて標識率を測定した結果、非標識体は検出限界未満であり、内標準物質として十分に使用可能であることが確認された。 ELISA用抗体として市販されている抗アンジオテンシンII抗体を用い、アンジオテンシン類縁ペプチドに対する抗体の特性を評価した結果、多くの類縁ペプチドに対し高い親和性を有することが判明した。このことは、類縁ペプチドを対象とした同時多成分スクリーニングが複数種の抗体を固定化することなく実現可能であることを示すものと考えられた。さらに、上記抗体をウェスタンブロッキング用PVDF膜へ物理的固定化し、各種条件を検討した。アンジオテンシンIIの検出条件は、上記膜を導電性テープでステンレス製プレートに貼付し、各種マトリクスを用いて正および負イオン検出の両モードで検討した。その結果、実用的な感度および定量範囲、精度を得るためには結合容量の増大が必要であり、本法に最適化した抗体固定化方法の検討を要することが判明した。
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