研究概要 |
研究では、酸化型Plastocyanin (Pc) , ならびにその反磁性アナログであるカドミウム置換Pcのphotosystem I (PSI) 結合様式を転移交差飽和法 (TCS法) に基づくNMR解析により解明することにより、PcがPSIに電子を渡した後素早く解離することにより効率良く電子輸送を行うメカニズムを解明することを目指している。今年度は、最初に、Pcを酸化型に均一化する方法ならびにカドミウム置換Pc調製法の確立を行った。NMR解析に通常使用されるリン酸バッファーでは、フェリシアン化カリウム添加によりPcを酸化しても、約半日後に還元型Pcが出現した。そこで、バッファー条件を検討した結果、Bis-Trisバッファーを用いることにより、1日以上Pc.を酸化型に均一化することに成功した。また、先行論文 (Eur.J.Biochem. (1996) 242, 132-147) にしたがってカドミウム置換Pcを調製して、1^H-<15>^NHSQCスペクトルを測定した。その結果、構造をとっていないPcの混入が認められた。そこで、精製法を検討した結果、陰イオン交換クロマトグラフィーにより、カドミウム置換Pcを単離することに成功した。そこで次に、<13>^C, <15>^N均一標識を施した酸化型Pcならびにカドミウム置換Pcを調製し、三重共鳴実験に基づくNMRシグナルの連鎖帰属を行った。さらに、[2^H, <15>^N]標識カドミウム置換Pcを、ミリグラム単位で調製することに成功した。以上により、酸化型Pcならびにカドミウム置換PcとPSIのTCS実験を行う基盤が整った。現在、TCS実験にて結合界面を正確に決定するために、リガンド濃度、受容体濃度、ラジオ波照射時間などの実験条件の最適化を行っている。
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