研究概要 |
低体重児における先天性副腎過形成症(CAH)の精密再検証分析法の開発のため, 病態マーカー分子である17α-ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)と, CAH偽陽性の原因物質と推定される17α-ヒドロキシプレグネノロン(17-OHPreg)のLC-ESI-MSIMSによる同時定量法の開発を行った. 血液濾紙から得られる微量のサンプルから(8μL)有機溶媒を用いて各ステロイドを抽出, 精製を行い, 2-ヒドラジノピリジンで誘導体化を行った後, LC-ESI-MSIMSに付した. 本誘導体化により, 17-OHP, 17-OHPregの検出感度をそれぞれ2.5, 160倍上昇させることに成功した. 定量限界は5, 1.0ng/mLと研究遂行上十分な値であり, 各種バリデーション試験の結果も良好であった. ついで, 札幌市衛生研究所から恵与されたCAH陰性又は偽陽性の低体重児及び正常体重児の血液濾紙を用いて各ステロイドの分析, 比較検討を行った(初回検査法 ; イムノアッセイ, 17-OHPのカットオフ値 ; 5ng/mL). この結果, 開発した方法を用いることで, CAH偽陽性の正常体重児は, 17名中16名が陰性と判別可能となった. 一方, CAH偽陽性の低体重児における分析では, 17-OHP, 17-OHPregが共に高値を示し, 17-OHPregが17-OHP高値の直接の原因では無いことが判明した. 本研究は, 血液濾紙中の17-OHP及び17-OHPregを同時定量した初めての例であるほか, LC-MSが現行のマススクリーニングの精密再検証分析の一助になることを実証したものである.
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