研究概要 |
リン酸化反応は蛋白質の代表的な翻訳後修飾の1つであり, 蛋白質の機能, 局在化, 標的蛋白質への結合能などを調節している。生物はこの可逆的な反応を利用して, シグナル伝達, 遺伝子発現, 細胞周期の調節などを行っている。よって, 蛋白質のリン酸化状態を知ることは疾患の治療や診断につながる可能性を持っている。そこで, 当研究室ではリン酸化物をより特異的に認識する機能性低分子「フォスタグ」を開発した。フォスタグは低分子であるため, 様々な既存のリン酸化物分離・分析法に適応できる。 フォスタグを用いた技術の1つにリン酸アフィニティー電気泳動法がある。通常の電気泳動ではリン酸基の有無による移動度の差がほとんどない。しかし, フォスタグを加えることで, リン酸基1つの違いでも分離することができる。更に, フォスタグは生体試料や低濃度の蛋白質にも適用できる。今回, この方法を用いた以下のようなリン酸化蛋白質の新しい電気泳動法を開発した。 (1) 同じリン酸化量のリン酸化異性体をリン酸化部位の違いにより分離検出することに成功した。 (2) Urea-PAGEとリン酸アフィニティー電気泳動法を組み合わせた新しい2次元電気泳動法を開発した。 (3) IEF/NEPHGEとリン酸アフィニティー電気泳動法を組み合わせた新しい2次元電気泳動法を開発した。 (4) SDS-PAGEとリン酸アフィニティー電気泳動法を組み合わせた新しい2次元電気泳動法を開発した。 今回構築した方法を用いることにより, より詳しいリン酸化状態の情報を得ることができ, 今後リン酸化プロテオミクスにおける新しい技術として大きく貢献できるものと考えている。来年度は, これらの開発された電気泳動法とディファレンシャル検出のコンビネーションを実現していく。
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