本年度は、下記の2点について検討を行った。 (1)腎不全マウス脳内におけるレドックスバランスの評価 腎不全マウス脳内の酸化ストレスは、DNAの酸化物である8-OHdGの免疫染色によって評価した。腎摘出後、2、4及び8週間経過したマウスの脳を摘出し、8-OHdGの免疫染色したところ、8週群において脳内860HdGの蓄積が認められた。脳機能は、放射状水迷路を用いて評価したところ、同様に8週群のみ学習障害が確認された。また、血漿中においても脂質過酸化物の蓄積や過酸化水素の上昇が認められた (2)NMDA型グルタミン酸受容体を介した尿毒素によるレドックス反応の評価 尿毒素によるグルタミン酸神経系へ直接的な作用を検討するために、慢性腎不全マウスから得られた血清を徐タンパクした後、マイクロダイアリシス法にて脳内灌流し、グルタミン酸動態や過酸化物蓄積を評価した。血清の脳内灌流においては、グルタミン酸及び過酸化水素の変動は認められなかった。この原因として、毒性を発揮する尿毒素の濃度が低いことが考えられた為、これまでに中枢性に障害を与えると報告されている尿毒素、Methylguanidine及びGuanidinosuccinic acidを、マイクロダイアリシス法を用いて脳内灌流した(てんかん発作を誘発することが知られている濃度 : 各1mM)。脳内グルタミン酸濃度は、いずれの化合物についても灌流時に低下が認められた。また、Methylguanidine灌流時においては、過酸化水素の生成がベースラインの1.5倍程度の上昇を示した。以上の結果から、尿毒素の種類によっては、脳内において過酸化水素を生成し酸化ストレスを惹起する可能性が示唆された。
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