研究概要 |
MUTYHは, 8-オキソグアニンとミス塩基対を形成するアデニンを取り除くDNAグリコシラーゼであり, PCNAと結合することで新生鎖上アデニンを特異的に認識して効率的にDNAを修復するという複製後修復を行う, 本研究では, MUTYHとPCNAを高純度で精製し, MUTYH-PCNAの機能型修復複合体の結晶化, X線結晶構造解析を行い, MUTYH-PCNA複合体の新生鎖修復機構を解明することを目的とする. まず, 結晶化実験に必要となるMUTYHとPCNAの大量調製を行った. PCNAについては, 大腸菌で大量発現させ, 種々のカラムを用いて精製を行い, 高濃度かつ高純度タンパク質を調製した.MUTYHは, これまで発現領域も含め, ヒスチジンタグ, グルタチオンS-トランスフェラーゼ, チオレドキシン(TRX)等の融合タンパク質として発現条件を検討しており, TRX融合タンパク質として大腸菌で大量発現させ, 精製を行った. 大量スケールにおいて, プロテアーゼによるTRXタグの切断を行うと, MUTYH単独では凝集, 沈殿するという問題が生じた. そこで, TRXタグ切断過程において, プロテアーゼの反応時間, PCNA添加による複合体としての安定性の向上, 界面活性剤の利用など種々の条件検討を行った結果, TRXタグを切断した単独MUTYHを安定な状態で回収することができた. 続けて, カラムを用いた精製を行い, 最終的に, 結晶化実験に適した高濃度のサンプルを調製し, MUTYHの精製系の確立に成功した. 複合体結晶の調製にあたり, MUTYH, PCNA, さらにはDNAの会合状態は未だ明らかになっていないため, 精製系を確立したMUTYHとPCNAを用いて, 単一かつ安定な複合体の形成条件を現在検討している.
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