アルツハイマー病および多発性硬化症時における神経炎症像の客観的画像診断法の確立を目的として、新規のポジトロン標識末梢性ベンゾジアゼピン受容体(PBR)リガンド[^<11>C]AC5216および[^<18>]F誘導体を合成し、アルツハイマー関連遺伝子導入マウスおよびアカゲザルを対象にポジトロン断層撮像(PET)法により評価を行った。家族性前頭側頭型認知症由来の変異Tauタンパク導入したP301Sタウマウスにおいて、[^<11>C]AC5216は海馬の炎症に伴って結合が増加することが明らかとなった。また、この結合は家族性の変異βアミロイド導入したAPP23マウスの結合よりも優位に高かった。この結果から[^<11>C]AC5216の結合は神経萎縮性の炎症時に結合が高いことが明らかとなった。また、このP301Sタウマウスを用い、2種類の[^<18>F]AC5216の誘導体を合成し評価を行った。この結果萎縮症状が重度な個体に関しては海馬に著明な集積を認めたものの、軽度〜中程度の個体に関しては画像化できず、検出力は[^<11>C]AC5216に比べ明らかに劣った。一方、アカゲザルを対象として上記のPBRリガンドについて脳内の動態を評価したところ、[^<11>C]AC5216は脳内滞留性が一番高く、[^<18>F]誘導体に関しては若干の改善が認めれらた。これらの結果から[^<11>C]AC5216はげっ歯類に対しては有望な結果を得ることができたが、霊長類では[^<11>C]AC5216よりも脳内滞留性を低くした誘導体の開発が必要と考えられた。特に[^<18>F]AC5216誘導体に関しては標識可能な位置が別に存在するため、他の部位への標識を現在検討中である。
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