本年度は、主に以下のアプローチでナノ構造を有する電極界面を作製し、その電極上へのヒト薬物代謝酵素(シトクロムP450:CYP)の固定化と電極によるCYP酵素反応駆動の検討を行った。 1.チオール有機分子を用いた界面:アミノ基、カルボキシル基やポリエチレングルコール基を有する親水性のチオール分子と芳香族環やアルキル基を有する疎水性のチオール分子を用いて、親水的なドメインと疎水的なドメインを有する電極界面構造を作製し、CYP分子の固定化と電気化学応答を検討したところ、疎水性ドメインにCYP分子が安定に固定化されることを見出した。また、電極からCYPへ電子を供給して酵素反応を駆動するためには、アルキル基よりも芳香族分子により構築された疎水性界面構造が有効であることも明らかにした(電流応答で10倍以上の差が観測された)。 2.ナノピラー、ナノ微粒子界面:電極界面上にナノサイズのピラーや微粒子構造を構築し、疎水性薄膜によるCYP分子の固定化とその電気化学応答を検討したところ、ナノ微粒子により構築された界面が電極-CYP間の電子授受に重要であることを見出し、現在詳細な検討を行っている。 上記1および2で得られたCYPの電極駆動に適した界面を、薬物研究現場で用いられているCYP試料(CYP分子が脂質膜に結合した状態の試料:ミクロソーム試料)に適用したところ、比較的安定に固定化されることを見出し、さらに電極駆動による薬物代謝反応を進行させることに成功した。
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