アダプター分子STAP-2は、炎症反応時に様々な免疫系細胞において細胞内シグナルを正または負に制御する多機能性分子である。本研究では、T細胞の活性制御におけるSTAP-2の機能的役割、特に制御機構の破綻が重篤な免疫疾患の原因と考えられる、活性化増殖したT細胞の排除機構AICD : activation-inducedcell death(活性化誘導性細胞死)に焦点をしぼり機能解析を行った。本年度はAICDを引き起こすことが可能なヒト白血病T細胞株Jurkatをモデル細胞とし、STAP-2の過剰発現系によりAICD誘導時における機能解析を行った。 1. STAP-2発現によるAICDへの影響 Jurkat細胞においてAICDを誘導すると、STAP-2発現細胞ではコントロール細胞に比べ細胞死が亢進することが確認され、これがアポトーシスの亢進によることを種々のアッセイ系により確認した 2. アポトーシス誘導シグナル伝達分子へのSTAP-2の機能的作用解析 AICD誘導時に働くシグナル伝達分子の発現量・活性を、STAP-2発現細胞とコントロール細胞とを比較した。細胞死を引き起こすサイトカインFasL、TNF-αやそれらレセプターの発現量に顕著な差は認められず、Caspase8、3/7等のアポトーシス関連分子の活性化がSTAP-2発現細胞で顕著に増強していた。 3. 細胞死誘導に関与するSTAP-2機能ドメインの同定 STAP-2は、PHドメイン、SH2-likeドメイン、プロリンリッチ領域といった機能ドメインを有している。これら各ドメインの欠失ミュータントを用いた解析から、細胞死誘導に重要などメインはSH2ドメインであることを同定した。 以上よりSTAP-2はJurkat細胞においてAICDを亢進させる分子であることが明らかとなった。来年度はノックアウトマウス等を用いて生体内での機能を解析する。
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