研究課題
PI(3,5)P_2の唯一の合成酵素であるホスファチジルイノシトール3リン酸5-キナーゼ(PIPKIII)の遺伝子欠損細胞およびマウスを独自に作製した。これらの表現型解析により、PIPKIIIがマウスの個体発生に必須の因子であるという新規の知見を得た。本研究課題では、Cre-loxPシステムを利用して、各組織特異的なPIPKIII遺伝子欠損マウスを作製し、マウス成体の高次機能におけるPIPKIIIおよびPI(3,5)P_2の生理的、病態生理的な意義を明らかにすることを目的として研究を行った。一昨年度は、消化管上皮におけるPIPKIII欠損の影響の解析を行い、極性を持った細胞における重要性を見出した。そこで、昨年度は、上皮細胞と同様に極性を持った細胞内での膜輸送が生理的に重要であることが知られている中枢神経系でのPIPKIIIの生理機能を明らかにするための解析を行った。中枢神経前駆細胞でCreリコンビナーゼを発現するnestin-CreトランスジェニックマウスとPIPKIII floxマウスを交配することにより、中枢神経特異的PIPKIII遺伝子欠損マウスを作製した。このマウスを用いて、運動に対する影響を検討した結果、振戦(四肢の震え)という興味深い表現型を見出した。脳の組織学的解析を行い、脳全域において著しい空胞化が引き起こされていることが明らかとなった。これらの結果から、中枢神経系でのPIPKIIIによる細胞内膜輸送制御の破綻が、運動異常を引き起こすことが示唆された。
すべて 2010 2009
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Nature (in press)
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