研究概要 |
HIVゲノム配列から4〜5対程度の標的候補配列を選択し,それらの配列に対して特異的に結合する亜鉛フィンガータンパク質(ZFP)をデザインした。デザインしたZFPについてドメイン数4〜6(認識するDNA配列 : 12塩基〜18塩基対)のバリエーションを持たせて構築した(合計30種類のZFP)。これらのZFPはMBP融合体として大腸菌内で発現し,アフィニティー精製を行った』DNA結合親和性の評価には定量的ELISAを用い,ドメイン数が5および6のZFPについて結合親和性として10nM〜400nMという値を得た。この値は,標的配列に対して特異的に結合するために十分な結合親和性であると考えられる。これらのZFPをDNA組換え酵素のDNA結合ドメインとして用いるために,Tn3を基にして作成された活性が確認されているDNA組換え酵素のドメインとの融合体を構築した。第1段階として, 標的配列をGFP遺伝子の両端に置いたモデル配列をもつプラスミド遺伝子を作製し,それに対する組換え反応について検討した。結果として, 50%程度の反応効率を示すことが明かになった。次に,用いた酵素ドメインの遺伝子配列をランダム化してベクター上での組換え反応効率をPCRで確認した結果, アミノ酸の配列による酵素活性への影響の一端が明かになった。また, 酵素ドメインが働く部分のDNA配列(スペーサー配列)の長さについても検討を行い, 今後の組換え酵素のデザインに有用な知見を得ることができた。このように標的とするDNA配列に対して特異的に反応する酵素(プログラム可能な酵素)は近い将来の実用化を見据えた場合に現存する医薬品(合成化合物,抗体医薬など)とは一線を画した長所を有しているため, それらとの併用, もしくは単独での使用でこれまでにない成果を挙げる可能性があると考えられる。
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