DNA組換え酵素のDNA結合ドメインを亜鉛フィンガータンパク質に変換することで配列特異性を有する組換え酵素を構築する。これにより任意のゲノム配列に対して機能する、つまり組換え反応により特定の遺伝子部位をノックアウトすることが可能になる。本年度においてはDNA結合親和性、および酵素ドメインとDNA結合ドメインをつなぐリンカー配列の長さが組換え反応効率に与える影響について検討した。反応の系としてはプラスミドDNA上に組み換え酵素遺伝子とスペーサー配列をもつ標的配列を置き、大腸菌内に導入した。組換え反応によってプラスミドの長さが変化するため、ゲル電気泳動によって定量的に評価できた。結果として、フィンガードメインの数が増加し、DNA結合親和性が増大するほど反応効率が向上し、リンカー配列については長くなるほど反応効率が低下することが明らかになった。組換え効率は最大で60%程度であった。次に哺乳類細胞内における反応効率についても検討を行った。標的配列はスペーサーとしてCMVプロモーターおよびEGFP遺伝子を有する配列を用いてゲノムに安定的に導入した細胞株(CHO-K1細胞)を樹立した。この細胞では組換え反応によってEGFPの蛍光が消失すると考えられた。導入する組換え酵素遺伝子をコードするプラスミドはIRES配列を介してDsRedを発現するようにし、プラスミドの細胞内導入効率も評価した。プラスミドの導入効率、および組換え反応効率の評価はそれぞれDsRed、EGFPの蛍光をフローサイトメトリーで評価した。遺伝子導入後、48時間後に組換え反応効率を評価した。結果として、プラスミド導入細胞において組換え効率はおよそ5%程度であることが明らかになった。また、細胞内における組換え反応効率は大腸菌内と同様にDNA結合親和性に依存するが、結合親和性が最大のものでは逆に組換え反応効率が低下するという結果が得られた。
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