我々は血管内皮細胞特異的に遺伝子が発現するメカニズムを明らかにするため、血管内皮細胞に特異的に発現するRobo4遺伝子の発現制御機構の解析を行っている。これまでに、Robo4遺伝子の発現制御を担うプロモーター配列に転写因子SP1、GABPが結合し、転写を活性化することを明らかにした。しかし、これらの転写因子は血管内皮細胞以外の細胞にも発現しているため、これらの因子が血管内皮細胞特異性を生み出しているとは考えにくい。そこで我々は、他の転写因子の関与を考え、新たなRobo4発現制御因子の探索を行った。まず、phylogenetic footprint法を用いて、様々な種におけるRobo4プロモーター配列を比較し、種間で高度に保存されている3つの転写因子結合配列(NF-kB、ETS、AP1)を同定した。さらにスーパーシフトアッセイにより、各配列に結合する転写因子を6種同定することに成功した。現在、これらの転写因子がRobo4の発現を制御するメカニズムについて解析を進めている。また、我々は転写因子を介さないエピジェネティックな転写制御メカニズムで、Robo4の発現が制御されている可能性についても検討を行った。Robo4を発現する血管内皮細胞と発現しない非血管内皮細胞におけるプロモーター配列のDNAメチル化状態を比較したところ、転写開始点付近の領域は、血管内皮細胞では全くメチル化されておらず、非血管内皮細胞では高度にメチル化されていることが明らかとなった。この結果から、プロモーターのDNAメチル化パターンがRobo4の発現制御や、血管内皮細胞特異性の創出に寄与している可能性が示唆された。現在、転写因子、エピジェネティクスの両側面から、Robo4発現制御メカニズムについて更に研究を進めている。
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