植物乳酸菌174A株の産生するバクテリオシンは、一般的な既存の三成分制御糸によるものとは異なった制御系をもつと推測された。そこで本研究では、本株における新規バクテリオシン産生制御システムを解明することを目的としている。 本年度はまず、174A株の産生するバクテリオシンの生合成遺伝子クラスター中に存在する2つの転写制御因子(orf4およびorf6)が、どういった塩基配列を特異的に認識して結合するのかを、DNase Iフットプリント解析によって決定した。また、新たに構築したシャトルベクターを用い、クラスター中の各ORFを導入しだ乳酸菌株を構築する過程で、相同性検索の結果からはその機能を推定することができなかった機能未知のORF(orf5)が、自身の産生するバクテリオシンに対する耐性遺伝子であることを見出した。以上の結果から、2つの転写制御因子は、バクテリオシンの自己耐性遺伝子(orf5)および生合成遺伝子(orf2およびorf3)の上流に、それぞれ結合することが明らかとなった。Orf4は比較的小さなタンパク質で、その大部分をDNA結合ドメインが占めており、相同性検索結果と併せても、シグナル分子を受容するような可能性は考えにくい。従ってOrf4は、自身の安定性のみでorf5の発現バランスをうまくコントロールする機構を備えていると考えられた。 膜結合型の転写調節因子であると推定されたOrf6の経時的な局在性を調査すべく、ウェスタン解析を行ったが、抗原タンパク質として膜貫通ドメインを含まないOrf6を使用したためか、調製した抗体の特異性が低く、成功には至っていない。なお、大腸菌ホスト・ベクター系を用いた全長型のOrf6発現株は構築済みであるので、新たな抗体を調製し、引き続き取り組む予定である。
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