βアドレナリン受容体遮断薬(βブロッカー)は現在、心不全治療の第一選択薬として使用されている。これまで、多くのβブロッカーが開発されてきたが、それぞれのブロッカーでその効果は異なる。不全治療薬として臨床でよく用いられているカルベジロール、メトプロロールに関しては両者を比較した大規模臨床実験(COMET試験)が行われ、カルベジロールの優位性が示された。本研究では、カルベジロールとそれより薬効の劣るメトプロロールの作用の違いを心臓の線維化に関与する細胞内シグナリングの観点より明らかにすることを目的とする。siRNAを用いた実験によりすでに我々はメトプロロールのみがβ1アドレナリン受容体を介し、βアレスチン1、2のうちβアレスチン2に依存して心臓の線維化に関与するシグナルを伝えることを見出していた。そこで我々はメトプロロール依存的なβ1アドレナリン受容体とβアレスチン2との相互作用を2分子間の生物発光蛍光共鳴エネルギー移動(BRET)法により示そうと考えた。そのためにβ1アドレナリン受容体にウミシイタケルシフェラーゼ(Renilla Luciferase)を付加したコンストラクト、およびβアレスチン2にGFPを付加したコンストラクトを作成した。両プラスミドをtransfectionした細胞にルシフェラーゼの基質であるDeepblue Cを加えたところ、メトプロロール添加に依存してGFPの蛍光量の増加が観察された。すなわち、β1アドレナリン受容体とβアレスチン2はメトプロロール依存的に相互作用することが明らかとなった。さらに、我々はこれまでに得られたin vitroでの結果がマウス個体レベルでも反映されるのか否かを検討するため、βアレスチン2のノックアウトマウスを用いて解析を行った。その結果、in vitroでの結果がマウス心臓にも反映されることが明らかとなった。
|